My Human Gets Me Blues

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2007-10-01 [長年日記]

_ [Food] ナマステ@大泉学園

ひばりが丘にはマラバール(パルコの中だけど)、保谷にはロソイ、石神井公園にはサイノとなんだか西武池袋線ではひと駅ごとにインド/ネパール料理の店が出来ているような昨今だが、なぜか大泉学園には無かったのですね(厳密に言えばリヴィン大泉の中にマサラというのがあるのだが、駅から離れたデパートの上なので若干不便)。どうせ時間の問題だろうとは思っていたが、やっぱり出来ました。

場所は、こちらも最近出来たラーメン屋とんとん亭の隣である(というかとんとん亭に食いに行って気づいた)。9/20オープンらしい。インド料理店というよりは、喫茶店のようなシンプルな内装。カウンター席あり。一番安いランチのセットが800円。テイクアウトOK。辛さの調節OK(辛口では私には甘すぎた)。

残念ながらこれはどこどこ風とかうんちくを垂れられるほどインド料理に詳しくないので何とも言えないのだが、メニューも味も非常に標準的というか、よくあるタイプのインド料理屋なので普通にうまい。ナンは熱々だったし、カレーも野菜の甘味がよく出ていました。今度は夜行ってみるかな。

本場インド料理店 NAMASTE

東京都練馬区東大泉4-3-18-101

年中無休

ランチ 11:30-15:00

ディナー 17:00-22:30 (L.O. 22:00)

Tel. 03-5387-6800


2007-10-02 [長年日記]

_ [Music] Piano Man / Hilton Ruiz

Piano Man(ヒルトン・ルイズ/バスター・ウィリアムス/ビリー・ヒギンズ)

去年、そんな歳でもなかったのに酔っ払って倒れたら打ちどころが悪くて死んでしまったヒルトン・ルイスのデビュー作。久々に日本盤が出たようなので紹介する気になった。

このアルバムに関しては個人的な思い出がある。大昔、ニューヨーク州、と言っても北のほうのとんでもない片田舎に住んでいたのだが、身辺が落ち着いたころに電車でニューヨーク・シティに行く機会があった。そのころから若干頭がおかしかったもので、自由の女神に登るとかメン・イン・ブラックの本拠地を訪ねるとかそういう真っ当な観光はせず、とりあえずタイムズ・スクエアのヴァージン・メガストアに飛び込んでCDを物色したのである。そして何枚かCDを買ったのだが、その中にこのアルバムがあった。なぜ買ったのかはよく覚えていないが、やはりジャケの麦わら帽子男にインパクトがありましたかね。以来、日本に帰ってきてからも折に触れてよく聞いている。

バスター・ウィリアムズにビリー・ヒギンズというベテラン2人で脇を固めた、新人のリーダーデビューとしては申し分の無い一枚で(まあ新人とは言ってもすでにジャッキー・マクリーンやローランド・カークらのサイドマンを務めた経験はあったが)、よく聞けば結構荒っぽい演奏ではあるのだが、そこはナチュラルなリズム感と勢いの良さで押し切って聞く者を飽きさせない。選曲もラテンのバックグラウンドを活かした魅力的なオリジナルに加え、コルトレーンの難曲を取り上げてみたり、こってりとしたブルーズを10分耐え抜いたり、なかなかの頑張りを見せている。

若くして才を見出された人、特にピアニストのデビュー作は、往々にして独特の爽やかで青い空気感を漂わせることが多いように思うのだが(例えばミシェル・ペトルチアーニの「赤ペト」)、この作品も例外ではないように思う。完成度とか、音楽的な厚みとか、そういったものさしで測ればまあ、いろいろけちもつけられるのでしょうが、これはこれでなかなかいいものです。


2007-10-08 [長年日記]

_ [Reading] ライセンシング戦略 / 高橋伸夫・中野剛治編

ライセンシング戦略―日本企業の知財ビジネス (東京大学ものづくり経営研究シリーズ)(高橋 伸夫/中野 剛治)

こんな本が出ました。第5章は「ソフトウェア・ライセンスと開発スタイル」ということで私が書いています。内容は(想定読者層を考えれば)中途半端にマニアックです。といっても白状すれば、全てはここ数年いろいろなところで私が書き散らしたりしゃべったりしたことの焼き直し(というか、適当にググれば原型となった文章や講演が見つかるはず)なので、私の言説を丹念に追いかけている奇特な人(そんな奴おるんか)にとっては全然新味はないかもしれません。まあ、私以外の最初の4章で十分お釣りがくるんではないかと…。


2007-10-11 [長年日記]

_ [Music] Indent / Cecil Taylor

Indent(Cecil Taylor)

セシル・テイラーのソロ・ピアノというと、もう長いこと私はSilent Tongues(Cecil Taylor)を愛聴しているのだが、このところはこちらをよく聞いている。買ったばかりのころは今ひとつ親しみにくい印象があって敬遠していたのだが、最近ではこれもいいかな、と思い始めた。

ちょっと聞いただけでは金太郎飴の如くどれも同じに聞こえるセシルの音楽だが、やはり人間のやることだけに、出来不出来は言うに及ばず、作品によって質というか肌触りの違いみたいなものがある。そういう意味でSilent Tonguesは、センチメンタルというか、セシルの作品群の中ではかなり叙情的な方向に針が振れた音楽ではないかと私は思う。言い方を変えれば、セシルの作品にしては「甘み」が感じられるということだ。あれのどこがだよ、と難詰されると言葉に窮するのだが、何度も聞いてたどり着いた結論なのでいかんともしがたい。

で、こちらはどうかというと、これはセシルにしても甘さひかえめというか、もう頭から尻尾までハードボイルドな展開である。いつにも増してタッチは強靭、フレージングは精確、とにかくビシビシとピアノを痛めつけていく。すべての音が、ある内容を表現するために、音色音量音程含めて完全にコントロールされている、という印象。セシルのピアノを聞くと、十分油が注されて黒光りした鋼鉄機械が高速動作している、というイメージが頭をよぎるのだが、機械的ではあっても無機的ではないというか、むしろ妙に生々しいのがカッコいい。

そういえばいつも不思議に思うのだが、この人は高音域と低音域で明らかに音色というか、ソノリティが違う。ピアノを二台並べて左右の手で使い分けているように聞こえることすらあるのだが、もちろんそんなことはあるまい。たぶんペダルの使い方なんだろうな。

_ [Mingus] Village Vanguard 1975 / Charles Mingus

最近はマイルズのみならずジャズ系のブートが数多く出現するようになってきたが、ミンガスのブートも結構な枚数が出回っている。これは1975年4月15日「ヴィレッジ・ヴァンガード」出演時の記録(2枚組)。オーディエンス録音だが、下手なサウンドボードものよりもはるかに迫力のある音で録れていて驚いた。録った奴の座っていた位置が良かったのだろうか、バランスも申し分無い。正味の話、公式に出たミンガスのライヴ録音の大半よりも音質が良いような気すらする。

この時期のクインテットはジャック・ワルラス、ジョージ・アダムスという強力なフロントにドン・プーレンのピアノ、御大のベース、そしてダニー・リッチモンドがドラムスという強力な布陣で、おそらく1964年のドルフィー入りセクステット/クインテットを除けば、ミンガスが持った最強のレギュラー・グループだろう。ここでの演奏ではとにかくリッチモンドが冴えていて、バックから全員を強烈に煽りまくる。8ビートで料理した「フォーバス知事の寓話」(おじさんたちが叫んでいる歌詞から判断するにここではFables of Nixon, Rockefeller & Ford, Oh Lord, Help Mr. Fordと改名)がとにかく素晴らしい。カッコよさという点ではおそらく今まで聞いた「寓話」の中でピカイチだ。しかも16分でスパッと終わる! 40分とかだらだら続かない!

唯一の欠点は、2枚めになるとやたら客の会話がうるさいことだが、まあこれはしょうがないですな。しかし、この客ども、わざわざ金払ってライヴ聞きに行ってるのだろうに、なんで演奏中にぺちゃくちゃしゃべっていたのかなあ。金がもったいないではないか。


2007-10-15 [長年日記]

_ [Movie] シティボーイズミックス PRESENTS だめな人の前をメザシを持って移動中

シティボーイズミックス PRESENTS だめな人の前をメザシを持って移動中 [DVD]

関西のお笑いコンビ、チョップリンをゲストに迎えた2004年のライヴ。昔WOWOWか何かで見たときは、声の出し方一つ取ってもおじさんたちとゲスト二人との舞台経験の差が目立ってしまい(特に小林)、ちょっと見られたものではないという印象だったのだが、最近になってDVDで見直したらそこまでひどくはなかった。とはいえ、いかんせんちょっと弱い。

私はどうしても三木聡が仕切っていた頃の、笑いの裏に毒や悪意がべったりと張り付いていて、しかも一見エピソード間に何の関連も無さそうなのに最後にはちゃんと話の帳尻が合うという高度に洗練された世界に愛着があるので、細川徹や坪田塁が作家陣の中心になってからの、なんだかんだ言ってベタで健康的な脚本には違和感が否めないのだが(決して面白くないわけではないんだけど)、まあそれは無いものねだりですわね。

そういえばこのときはPE'Zが音楽を担当している。私の周りにはPE'Zが嫌いというハードコアなジャズ・ファンがいるが、ここでの彼らの音楽は舞台にコンテンポラリーな空気を送り込んでいて、個人的にはとてもクールだと思います。

本日のツッコミ(全1件) [ツッコミを入れる]

_ 削除Joshua Yearick [削除http://viagra.historyworthreading.net/compare-price-for-..]


2007-10-17 [長年日記]

_ [Life] MIAU設立のお知らせ

MIAUという組織を立ち上げることになりました。著作権等の問題について情報共有を進め、広い意味でのネットユーザの利害を公式な場で代弁することを目指しています。急な話でなんですが、明日11時から設立発表の記者会見があります。個人的に思うところはOpen Tech Pressのジャーナルに書きました。


2007-10-19 [長年日記]

_ [Music] ミンガス特集のお知らせ

MIAUで時間を取られて告知するのをすっかり忘れていましたが、明日土曜日の15:30より四谷「いーぐる」で、ジャズ・ベーシスト/作曲家のチャールズ・ミンガスの音楽についてお話をいたします。なにせ膨大な量の音源があるので、今回は大編成ものに絞っておかけするつもりです。お暇な方はぜひお越し下さい。


2007-10-21 [長年日記]

_ [Reading] 個人的十二大小説

愛・蔵太さんyomoyomoさんを始め、みんなやっていてなんだか楽しそうなので混ぜてもらうことにした。私は大体一日1冊は本を読んでいるが(最近読んだ本)、最近はほとんどノンフィクションばかりだ。でも、昔は良く小説を読んでいた。

「世界」十大小説とか言うと話がでかすぎて私の手に余るので(「日本」でも手に余るが)、単に自分が、ページをめくるのももどかしく貪るように読んだという記憶があるものだけを10冊選んだ。文学史上の重要性よりも、読者の首根っこを掴んで小説世界に引きずり込む力、ストーリーテリングに傑出したものを優先した。ようは読んで面白くてナンボということだ。かなり偏った好みであることは承知しているが、ただ面白いだけではない、表現としての強度も充分に備えているもので、かつ再読再々読に耐えるものばかりだと自負している。といっても今たまたま思いだした10冊というだけのことなので、他にもあったはずだが(というかスティーヴン・キングが抜けていることに後で気づいた)、まあこんなものしょせんお遊びなのでしょうがない。あと、すでに他の人が挙げているものはできるだけ外した。

後で数え直したら、実は12冊リストアップしていたようだ。もったいないからそのまま。あと、驚いたことに今では全部文庫で手に入る。

_ [Reading] 吾輩は猫である / 夏目漱石

吾輩は猫である (岩波文庫)(夏目 漱石)

漱石は神棚に祭り上げられて久しいが、この話は(ゲラゲラ笑えると言う意味で)めちゃくちゃ面白い。我ながらうんざりするほど読み返している。文明批判とか明治の社会がどうしたとかその手のゴタクはどうでも良い。落語的センスと言われることもあるが、個人的には落語よりもスラップスティックなコントに近い乾いた質の笑いを感じる。寒月がヴァイオリンを買いに行くくだりなどはたまらん。

_ [Reading] 瘋癲老人日記 / 谷崎潤一郎

瘋癲老人日記 (中公文庫)(谷崎 潤一郎)

古今東西で完璧な小説というものを一つ挙げるとしたら、おそらくこれは真っ先に候補にあがるべきものだと思う。もうすごいのよ。死んでもいいから(というか事実死にかけている)嫁の足を我が物としたいという77歳のどうしようもないジジイの話なのだが、圧倒的な筆力でぐいぐい読ませる。60年代当時の風俗描写も鋭い。書いたとき谷崎は75歳。しかも高血圧で手が利かず口述筆記という有様だったと言うが、鱧ばかり食うと精がつくのだろうか。

_ [Reading] 虚航船団 / 筒井康隆

虚航船団 (新潮文庫)(筒井 康隆)

いきなり時代が飛ぶ。近年の役者としての筒井はかなりやばいと思うし、小説家としてもいかんせん旬を過ぎた(現在の能力という意味でも、過去の作品の評価という意味でも)と思うが、でもこれを書いたのだから以って瞑すべしとも思う。最後の1行ですべてが救われる。しっちゃかめっちゃかな話を、ずばぬけた構成力というか、最後は腕力でまとめあげたという印象。英訳したら海外でも相当評価されると思うのだが(もうあるのかな?)。

_ [Reading] 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド / 村上春樹

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)(村上 春樹)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)(村上 春樹)

今あらためて読むとまた違った感興を覚えるのかもしれないが、これも初めて読んだときには、何よりも読み物として面白くて、相当な大部であるにも関わらず途中で止められなかった。最後の決断のわけの分からなさも含めて全体としては奇跡的なバランスを保った、おそらくは村上の最高傑作なのだろうと思う。というのも、率直に言って以降の村上の作品からは、この作品以上の読後の満足感というかカタルシスのようなものを得られた試しがないからだ。

_ [Reading] さようなら、ギャングたち / 高橋源一郎

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)(高橋 源一郎)

これもうんざりするほど読み返している。ご多分に漏れず私もキャラウェイのところが好きだが、最後ギャングたちが皆死んでしまったあとの話の持って行き方も完璧だ。個々のフレーズが喚起するイメージ間の微かなつながりだけを頼りに、多様な読みを許しつつも物語に強力な推進力を与えていく手つきは他に類を見ない。高橋にしても結局これが最高傑作で、あとは『虹の彼方に』(特に「戻っておいで『カール・マルクス』」)がそれなりに優れているが、他は正直に言って今ひとつだと思う。

_ [Reading] 阿修羅ガール / 舞城王太郎

阿修羅ガール (新潮文庫)(舞城 王太郎)

ここ数年読んだ中では、舞城のこの作品が最も強烈な読後のカタルシスを与えてくれた。文体が寄り添うリズムがとにかく素晴らしい。ひどい話なのだが一気に読めて、後には爽快な気分が残る(どっと疲れもするけれど)。どこまで話を下品で残酷な方向に持っていっても、ストーリーが内包する切実さが話の品位をある水準につなぎ止めている。覆面作家ということでどういう人なのかは知らないが、おそらく基礎体力としての教養が圧倒的なのだろう。そもそも文章に全く違和感を持たずに読めるのは、最近の作家では珍しい。

_ [Reading] 千夜一夜物語 バートン版 全11巻

千夜一夜物語 バートン版 全11巻

日本の小説を56冊挙げたので、後は海外のを。なぜか古い版が家にあったので、これも小さいときから良く読んでいた。当然エロいところやエグいところはとりわけ熱心に熟読玩味した。かったるいところも含めて私は大好きだ。私はこれさえあれば当分退屈しない(実際、海外に行くときは大体1冊は持っていく)。大場正史の訳も素晴らしい。

_ [Reading] ポオ小説全集 IV / エドガー・アラン・ポオ

ポオ小説全集 4 (創元推理文庫 522-4)(エドガー・アラン・ポオ/丸谷 才一)

これも死ぬほど良く読んだ。ポオは何度読んでも面白い。特にこの巻の充実ぶりは異常で、「黄金虫」「黒猫」「長方形の箱」「不条理の天使」「『お前が犯人だ』」「ウィサヒコンの朝」「シェヘラザーデの千二夜の物語」「ミイラとの論争」「天邪鬼」「タール博士とフェザー教授の療法」「ヴァルドマアル氏の病症の真相」「盗まれた手紙」「アモンティリャアドの酒樽」「アルンハイムの地所」「メロンタ・タウタ」「跳び蛙」「×だらけの社説」「フォン・ケンペレンと彼の発見」「ランダーの別荘」「スフィンクス」「暗号論」、思わずタイトルを全部書き出してみたがどう考えても全部が全部傑作である。普通こんなことはあり得ない。個人的には「×だらけの社説」が(野崎孝のアクロバティックな名訳も含めて)最高だと思う。

_ [Reading] 木曜の男 / G.K.チェスタトン

木曜の男 (創元推理文庫 101-6)(G.K.チェスタトン/吉田 健一)

筋としてはなんだかわけの分からない話だが、とにかく文章に強烈なスピード感があるのでこれまたぐいぐいと読まされてしまう。タネが分かっていてもずっと強烈な不安感に苛まれるあたりがたまらない。こうした生理的な気持ち良さ(?)があるのでついつい手にとってしまう。ブラウン神父ものも良く読んだが、愛着があるのはこっちだな。チェスタトンはエッセイも好きでよく読んだ。考え方にも影響を受けているかもしれない。

_ [Reading] ヒューマン・ファクター / グレアム・グリーン

ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)(グレアム グリーン/Graham Greene/加賀山 卓朗)

これは小説というか、ストーリーテリングの一つの極致だと思う。とにかく読ませる。最初はじわじわと、途中からは一気に話を展開して、伏線にも全部落とし前を付けつつ救いのないラストまで読者を飽きさせない。Mercy, Mercy, Mercy! Live at 'The Club'(Cannonball Adderley Quintet)のキャノンボールのMCではないが、なんというか、人間どうしようもない状況に追い込まれるということはあるものだ。ベストを尽くして、正義を完遂しようとして、結果として悪行を犯すということがある。分からない奴には一生分からないのだが、どうしようもないことというのは、本当に当人にはどうしようもないことなのだ。そういうとき、神の慈悲にすがる以外にどうすべきか。あるいは何ができるのか。最後はかなり泣ける。私は小説家になろうと思ったことはないが、もし書くのだったらこういうものが書きたい。

_ [Reading] 流れよわが涙、と警官は言った / フィリップ・K・ディック

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)(友枝 康子/フィリップ・K・ディック)

別に『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』でもいいのだが、やはり最初読んだときのインパクトはこちらのほうが大きかったような覚えがある。負け犬ディックを褒めるのはなんだかイヤなのだが、これはある種の同族嫌悪のようなものだろう。ただ、ここで挙げた二作はディックにしてはポジティヴというか、作り物でない温かさが心に食い込んでくる傑作だと思う。

_ [Reading] キャッチ=22 / ジョーゼフ・ヘラー

キャッチ=22 上 (ハヤカワ文庫 NV 133)(ジョーゼフ・ヘラー/飛田 茂雄)

こういうのは眠いときに書くもんじゃないですね。実は11個しかなかったことに後から気づいたのでもう一つ追加。日本編で舞城を挙げたので、海外編も最近の人を挙げたかったのだが、正直最近の海外の小説で面白いと思ったものがない(そもそも余り読んでいないので元来こういうことを言う資格も無いのだが)。最初のセレクトで抜けていたキングのシャイニング(上)シャイニング(下)でお茶を濁そうかとも思ったが、まあせっかくなのでここは自分の好みに殉じることにした。余りに理性的過ぎて完全に狂っている世界が私は大好きだ。


2007-10-28 [長年日記]

_ [Music] ミンガス特集@四谷いーぐる御礼

先週土曜は多くの方にお越しいただきありがとうございました。ミンガス神様説やミンガスダメアレンジャー説等の珍説をいくつか披露しましたが、刺身ならぬ音楽のツマとして楽しんでいただけたなら幸いです。人種差別という自分にとって切実な問題に対し一歩も退くことなく、しかし諧謔味も忘れずに死ぬまで怒りまくっていたミンガス大先生にあやかりたい今日このごろ。

以下はかけたアルバムです。一覧は間もなく後藤さんのブログに出るはずですが、ご参考まで(ジャケ画像をクリックするとAmazon.co.jpから通販で買えます)。改めて調べてみると結構廃盤になってるくさいものが多いのでショック。

_ [Music] Charles Mingus and Friends in Concert

Charles Mingus and Friends in Concert(Charles Mingus)

1曲目と2曲目はここから。Columbia Legacyは足が早いのか、これは廃盤みたいですねえ。Amazon.co.jpでもレビュー書くくらいに個人的には好きなアルバムなのですが。ちなみに、大昔出ていた日本盤CDと現行の輸入盤は収録内容が若干違います。

_ [Music] Pre-Bird

Pre-Bird(Charles Mingus)

3曲目はここから。レナード・フェザーがMercuryをクビになる原因を作った問題録音。

_ [Music] The Complete Town Hall Concert

The Complete Town Hall Concert(Charles Mingus)

4曲目はここから。ジャズ史上まれに見る大失敗コンサートの実況録音です。と言ってもこの曲はゴージャスながらしんみりしていてなかなか良いと個人的には思うんですが、でもオリジナル盤には収録されなかったので意味無いですね。ミンガスにはもう一枚、Town Hall Concert(Charles Mingus)という似たような名前の作品があるので注意。

_ [Music] The Black Saint and The Sinner Lady

黒い聖者と罪ある女(チャールズ・ミンガス/リチャード・ウィリアムス/クエンティン・ジャクソン/ドン・バターフィールド/ジェローム・リチャードソン/チャーリー・マリアーノ/ジャッキー・バイアード/ダニー・リッチモンド)

5曲目はここから。このへんがミンガスの作品としては一番まとまりが良いのかもしれませんね。だからといって愛着があるかと言うと、なかなか難しいところでもあるのですが。

_ [Music] Mingus Mingus Mingus Mingus Mingus

Mingus Mingus Mingus Mingus Mingus(Charles Mingus)

6曲目はここから。これはミンガスのベースを聞く作品だと思います。Impulse!はソロピアノ作もいいし、打率高いですね。

_ [Music] Thirteen Pictures (Mingus At Monterey)

Thirteen Pictures: The Charles Mingus Anthology(Charles Mingus)

7曲目はここから。Mingus At Montereyは日本盤、輸入盤問わず廃盤のようなので、とりあえずこれ(の2枚目)を。ちなみにこの2枚組コンピはハル・ウィルナーが選曲したもので、最初見たとき思わずうーんとうなってしまいました。なにせ1枚目の冒頭が後で出てくるCumbia & Jazz Fusionなので。

_ [Music] Music Written For Monterey 1965 Not Heard...Played in Its Entirety at UCLA

At UCLA 1965(Charles Mingus)

8曲目はここから。なんだかんだ言ってよく聞いています。この作品に関しては昔出たときに書いた日記記事をご覧ください。

_ [Music] Let My Children Hear Music

Let My Children Hear Music(Charles Mingus)

9曲目はここから。私は結構好きでよく聞くのですが、これも廃盤ぽい。日本のCD屋でほとんど見かけないのはそういうことでしたか…といってもAmazon.co.jpのユーズドなら注文すればすぐ届きますが。ちなみにミンガス自筆のライナーノーツもなかなか感動的なのですが、現行CDだとなぜか抜粋しか入っていないのが残念。

_ [Music] Cumbia & Jazz Fusion

Cumbia & Jazz Fusion(Charles Mingus)

10曲目はここから。何といいますか、大団円にふさわしいおっとろしく祝祭的な音楽で、私も相当な回数聞いているのですが、講演時にまた聞き返してかなりハイになっていました。でもやっぱり廃盤らしい。