My Human Gets Me Blues

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2003-11-28

_ [Sun Ra] A Quiet Place In The Universe / Sun Ra & His Arkestra

A Quiet Place In The Universe / Sun   Ra & His Arkestra

All Music Guideのジャズ関係のレビューはほとんどScott Yanowという評論家が書いているのだが、見たところ日本のジャズ雑誌のようにどんなクズでも誉めるというわけではないし、かといって個人的な嗜好に極端に偏るということもなく、それなりに客観的な態度を保っていて、そこそこ信頼がおけるように思われる。そのYanowをして「おおかたゴミ(largely a waste)」「やめとけ(so skip this one)」とまで言わしめ、輝かしくも1つ星を獲得(ちなみに満点は5つ星です)したのがこの作品である。1つ星なんて滅多に見掛けないので、ある意味勲章と言えよう。

元々後半だけ別のCDに入っていたのだが、1994年、例によってサン・ラー馬鹿にとって愛憎半ばする味方であるLeo Recordsがノーカット完全版を出してくださった。ありがたや。ちなみにジャケはなかなかかっこいい。

録音年代は、All Music Guideでは1976年としているがおそらく1977年初頭が正しい。水面下で出回っている1977年4月29日、ペンシルヴァニア大での音源とメンツがよく似ているからだ。

1曲目は私が知る限りこのライヴでしか演奏していない珍しいバラードで、作曲家としてのサン・ラーがモンクやミンガス、あるいはエリントンといった系譜に直接つながる存在であることを証明する、奇妙で美しい演奏である。このメロディーなどはカバーに耐えうる強度を持っていると思うのだが、誰かやらないものか。

たぶんYanowはこいつを聞いてイヤになったんだろうが、Friendly Galaxy No. 2という曲に乗せてほぼ19分間、サン・ラーが説教するというのが2曲目で、まあこいつは飛ばしたほうがいい。一応どんなものか言葉で説明すると、村祭りのお囃子(フルートがいかにもそれくさい)に乗ってマイク近づけ過ぎの酔っ払いが数名大いに語るというようなもので、聞くだけ人生の無駄である。生で見れば楽しいんだろうが。

あとはフレンチホルン(ヴィンセント・チャンシー)とサン・ラーのデュオあり、普段はバリトンに専念しているパット・パトリックがアルトでしみじみとスタンダードを吹くトラックあり、定番のLove in Outer Spaceあり(ただし打楽器をフィーチャー)という感じで、まさに玉石混淆だが、最後にまた定番のSpace is the placeが来る。これが凄い。なぜか良く分からないがものすごいノリで、シャッフルに近いリズムに乗ってアーケストラ全員が疾走する。

おおこれはすげえ、と喜ぶのもつかのま、3分くらい経つと音が突然揺れて、フェードアウト、おしまい。テープトラブルなんだろうが、そりゃないだろうよおい。

ということで、さすがに「おおかたゴミ」とまでは言わないが、1曲目と6曲目を聞くために2000円払う気合いがある人間にのみお薦めする。まあ、この2曲で十分お釣りが来ると思うが。

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Before...

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2008-11-28

_ [Jazz] I Love The Life I Live / Mose Allison

Mose Allison Trilogy: High Jinks!(Mose Allison)

以前ベン・シドランのことを取り上げた時も似たようなことを書いたが、日本にモーズ・アリソンの熱烈なファンという人がどれくらいいるのか、私には全く見当がつかない。たぶん5人くらい?

熱烈というほどではないが私もアリソンは結構好きで、ここ数年、彼のCDがそれなりに手元に溜まってきた。村上春樹氏もさよならバードランドの巻末「私的レコードガイド」でアリソンについて、「特に熱心にあつめたわけではないのだが、目についたものを買っているうちにけっこう沢山レコードがたまってしまった」とお書きになっていたが、全くもってそんな感じである。

当たり外れが少ないと言えば聞こえは良いけれど、裏を返せば時代を画する大傑作とか目が覚めるような問題作といったものは皆無ということでもあって、どれを聞いても基本的には同じ世界が広がっている。じゃあ一枚買えばそれでいいじゃないかと言う人もいるだろうが、そういう身も蓋もないことはアリソンに言わせておけば良いのであって、あなたが言う必要はないのである。ねじけてひねくれて愉しく後ろ向きなアリソン・ワンダーランドにどっぷり浸かって、なかなかうまいこと言うなあ、でも全然変わり映えしねえなあ、などとつぶやきながら一人で聞いて微妙な気分になるのがアリソンの音楽の正しい楽しみ方だ。

ところで、シドランにしろアリソンにしろ、このタイプのミュージシャンはどうしても皮肉の効いた歌詞の内容に最大の注目が集まるが、ピアニストやヴォーカリストとしてのアリソンの良さというのも無いことはないのである。ただ、それはなかなか明確に言語化しづらいものなのだ。ピアノもワンパターンと言えばワンパターンだし、歌にしてもあんな鼻声で音程も怪しい歌のどこがいいんだと難詰されると言葉に窮する。結局、あのピアノとヴォーカルの絡み具合が…というような、極めて感覚的なものなのですね。そこに身も蓋もない歌詞が加わって、独特の魅力が醸し出されることになる。

このCDは村上氏が前掲書で挙げていたものだが、元々CBSから出たこともあってたぶん世間的にもアリソンの代表作ということになるのではないかと思う。てっきりCD化されていないと思い込んでいたのだが、なんと3枚組(といってもボックスセットではなく、CD3枚を紙の箱に入れただけ)で出ていた。もう廃盤のようだがユーズドなら買える。最近はこればかり聞いている。

ちなみに、氏は「このレコードに入っている『アイ・ラヴ・ザ・ライフ・アイ・リヴ』という彼のオリジナル曲はとてもいい」と書いているが、もちろんこの曲はウィリー・ディクスンの曲である。「とてもいい」のには違いないけどね。