My Human Gets Me Blues

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2007-11-20 [長年日記]

_ [Music] Live at the Bee Hive / Clifford Brown

Complete 1955: Live at the Bee Hive(Clifford Brown)

ここ数年、クリフォード・ブラウンの非公式なライヴ録音が、まあそれなりに公式な形でリリースされ、容易に手に入れられるようになった。どれも音質的にはかなり厳しいが、内容的には聞けば即座に鼻血が噴出するようなとてつもないものばかりである。ブラウニーのトランペッターとしての技量が凄いのは言われんでもよく分かるし、端正と言えば聞こえは良いのだろうが、今ひとつお澄まししているようなところがあって、はっきり言って聞いてもなんかグッと来ねえんだよなーとか思っていた私のような者の了見の狭さを思い知らされる強烈な演奏だ。雑音だなんだと文句を垂れる人は、開き直ってとにかくでかい音で聞きなさい。

この2枚組CDの1枚目から2枚目トラック1にかけては、1955年11月7日、シカゴのクラブ「ビーハイブ」におけるプライベート録音で、かつて「Raw Genius」というタイトルでLP化されたことがある。何でもこのテープは、ブラウニーが自動車事故で26歳を一期に死んだ時、横転して大破した車の中から拾い出されたものなんだそうで、おまけに当時シカゴに逼塞していたソニー・ロリンズを引っ張り出してバンドに入れようとした際のオーディションの記録でもあって、もうこれでもかというくらいに伝説がまとわりついた音源だ。音質はまあ、一般的な基準からすれば大変によろしくないと言わざるを得ないのだが、慣れてしまえばどうということもないし、以前Philologyから妖しく出ていたころに比べればかなり改善されていると思う。それに、ブラウニーやロリンズといったフロント陣と、ローチの音はよく録れているし、ピアノやベースも聞こえないことはない。

で、肝心の内容だが、夭折したテナーのニッキー・ヒルを始め、ギターのレオ・ブレヴィンズやピアノのクリス・アンダーソン、ビリー・ウォレスといった、後年全国的にも名を上げることになる地元の腕利きミュージシャンを交えた長尺のジャムが、もうそれはそれはこってりと繰り広げられる。ビバップを継承し発展させるのは俺たちだとばかりに一流のプライドを剥き出しにするブラウニーやローチが素晴らしいのは言うまでもないが、地元の連中も含めて参加者全員俺が俺がと秘技を尽くして目立とうとする、これは今日び珍しくなった本物の果し合いセッションである。ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド(クリフォード・ブラウン/ヴァンス・ウィルソン/ビリー・ルート/デューク・ウェルズ/サム・ドッカリー/エディ・ランバート/エイス・ティソン/ジェームス・ジョンソン/エリス・トリン/オシィ・ジョンソン/クリス・パウェル)もそうだったが、結局ブラウニーという人はこの手のあまり責任が無い状況での吹きまくりにこそ本領を発揮する人だったようだ。

CD2枚目の残りはBrownie Lives! Live at Basin Street and In Concert(Clifford Brown/Max Roach Quintet)といった形でもこのところ出回っていた、ニューヨークのクラブ「ベイジン・ストリート」でのライヴ。公式盤でAt Basin Street(Clifford Brown/Max Roach Quintet)というのがあるが、あれは「ベイジンストリート」に出演していて有名な、という程度の意味らしく、実はスタジオ録音であった。こちらは正真正銘のライヴ録音だが、ラジオ放送を録音したエアチェックなので、やはり音質がナニである(エアチェックにてはかなり良い方だけどね)。ロリンズのValse Hotとか曲目もおもしろいし、内容も基本的に申し分ないのだが、途中でなぜかローチが抜けてドラマーがウィリー・ジョーンズに代わるのが不思議と言えば不思議。リーダーのくせに、仕事の掛け持ちをしていたのだろうか…。最後に1曲おまけとして、コペンハーゲンで当時のボス、ライオネル・ハンプトンの目を盗んで行った1953年の録音が追加されているが、ゆるゆるのジャムセッションとは言えこれもなかなかの出来。