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君は樹脂ペン先のボールペンを知っているか

pink and black click pen beside white paper

別に知らなくても人生には何ら影響ありません。

ペン先(チップ tip と称する)に小さな玉、すなわちボールが嵌まっていて、これがコロコロ回転してインクを紙にこすりつけることにより線が描かれる、というのがボールペンの基本的な原理である。ペン先と玉には相当な負荷がかかるので、どちらもステンレス鋼やタングステンなど硬い金属で製作されることが多い。

ところが、ペン先、あるいはペン先と玉の両方を樹脂で作ったボールペンというのが世の中には存在していて、これが私の好物なのだ。

結局のところ、ペンの書き味の大半はペン先と紙との摩擦抵抗の具合で決まる。で、以前も書いたが、私はサインペンやフェルトペン(あとついでにプラマン)のたてるキュッキュッという音や感触が生理的に苦手で、できれば御免被りたいと思っている。通常の金属ペン先ボールペンのカリカリという書き味は別に好きでも嫌いでもないが、どちらかと言えば好きではない。私が好きなのは、抵抗をほとんど感じずに、ぬるぬるすらすらと滑るように書ける奴なのである。加えてかすかに書きごたえというか、サクサクという感触が伝わってくるとなお良い。万年筆でもいいのだろうが、万年筆は扱いが何かと面倒くさい。なめらかな書き味を手軽に楽しめるのが樹脂ペン先のボールペンというわけだ。

私が知る限り、樹脂ペン先のボールペンは全て水性ボールペンである。ただでさえジェットストリーム・フォロワーの低粘度油性インクやらゲルインクやらに押されて絶滅が危惧されている水性ボールペンの、その更にマイナーなサブジャンルということになるわけで、樹脂ペン先が無くなったら私はこの先どうやって生きていけばいいのだろうと今から心配している。まあそうなったらあきらめて万年筆でも使うとは思いますが…。

ぺんてる ボールPentel 水性ボールペン 0.6mm 黒 [1本] B100-AD

現在日本で最も手軽に買える樹脂ペン先の水性ボールペンは、おそらくぺんてるのボールPentelだろう。1972年に誕生して以来ほとんどモデルチェンジもされずにずっと販売され続けているという、シーラカンスのようなペンである。品名はダジャレで軸はトイレ掃除のサンポールみたいな緑色と、お世辞にもクールとは言いがたい。というか時代遅れ感が尋常ではない。しかし、このペンは日本で唯一、もしかすると世界で唯一かもしれないが、ペン先も玉もデルリンという樹脂で作られているのである。結果として、ワン・アンド・オンリーとしか言いようがない独特の書き味を獲得している。

なお、ボールPentelは、土橋正氏によると以下のような偉大な人々にも愛用されているそうだ。

  • 秋元康先生
  • エリザベス女王先生

エリザベス女王のほうは真偽は定かではないが、秋元康はたぶんこのGQのインタビューで「ぺんてるの水性ペン」と言っているのがそれだと思う。Amazonのレビューによればタイの新聞記者にも大人気のようである。名前は忘れたが以前テレビのニュースキャスターでこれを使っている人を見かけたこともある。色と形がおそろしくダサいのですぐ分かる。分かる人には分かるのである。不肖わたくしも20年くらい使っている。まあ正直に言えば、0.6mmという太字でも細字でもない中途半端な太さなので、手帳に漢字で細かくびっしりメモをとるというような用途には全く向いていない。ある程度大きな字を、大きな紙に、おおらかに書くのがよろしい。もちろん水性ボールペンなので、書き出しでかすれるようなことはまずない。

さすがに大手ぺんてるの製品だし、私が知る限りLOFTとか東急ハンズとか、大きめの文具店ならどこでも置いてあるのだが、大体扱いは悪い。下手をするとボールペン・コーナーに陳列されていない。陳列棚の下の在庫棚に無造作に突っ込んであって探さなければならなかったりする。最近はAmazonで買えばよいのだが。

【SCHNEIDER/シュナイダー】ベースボール専用インクカートリッジ 青

ボールPentelが日本の雄ならば、ドイツの雄がシュナイダー852である。シュナイダーはドイツの文具メーカーで、いろいろなものを作っているのだが、その中に852というリフィルがある。これはペン先ごと換えるタイプの水性ボールペン用インクリフィルなのだが、なんと樹脂ペン先なのである(玉は金属らしい)。これがあなた、もうね、たまらない書き味なんですよ。といってもインクがドバドバ出過ぎて、いくらなんでも線が太すぎるし薄い紙だと裏抜けするので、常識的な意味での日本語筆記には全く適していない。欧米サイン文化の産物であろう。

【SCHNEIDER/シュナイダー】ベースボール ブルー×ブラック

私自身はID Duoという、蛍光ペンとの2 in 1な軸を使っているのだが、852が使える一番安い軸は上に挙げたBaseballというものだと思う。国が違うのにまたもや品名がダジャレである。他にBreezeというのもあるが、樹脂ペン先の水性ボールペンの軸は、デザインを微妙にしなければならないという国際条約でもあるんだろうか。なんだこれは。おそらく子供向けなので、こんな感じのデザインばかりなんでしょうね。

長年にわたり、樹脂ペン先のボールペンは私が知る限り基本的にこの二強しか無く(もしかすると他にあるかもしれないのでご存じの方はぜひ教えてやってください)、それで別に困らなかったのだが、最近三菱鉛筆が、ジェットストリームでがっぽり稼いだ余裕のなせるわざか、突如樹脂ペン先な水性ボールペンの新作を投入してきたのである。その話はまた今度。

「君は樹脂ペン先のボールペンを知っているか」への1件のフィードバック

  1. 通りすがり

    三菱鉛筆のサインペン、uniリブの0.5mmが同じような樹脂のペン先ですよ!もし機会があったらお試しください。

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