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笑顔のファシズム / バートラム・グロス

笑顔のファシズム―権力の新しい顔 (上)

笑顔のファシズム―権力の新しい顔 (下)

Friendly Fascism: The New Face of Power in America (Forbidden Bookshelf) (English Edition)

マイケル・ムーアがこの本の一節をツイートで引用していたので、興味を持って読んでみたのだが、一読して驚いた。タイトルが「笑顔のファシズム」なので、今後ソフトなファシズムが流行りますよーというくらいのありがちな内容を予想していたのだが、それどころではなかった(まあそれだけの話で数百ページも書けるわけがないのだが)。1980年に書かれた本なのだが、「笑顔のファシズム」と言うべきものが広く受け入れられる素地とはどのようなもので、その担い手は誰なのか(貧乏白人だけではない)を明確に指摘していて、それが気味が悪いくらいに現在のアメリカの状況と合致している。今は時間がないのでとりあえず目次を書き抜いておくが、目次を見るだけでも面白さはだいたい分かると思うんですよ。一応邦訳は出ている(とても読みやすい訳)なのだが、とうの昔に絶版のようだ。電子書籍でもいいから再版されんもんかねえ(原著 Friendly Fascism: The New Face of Power in America ならKindle版あるけど)。


序章 憂国の警鐘

Ⅰ フレンドリー・ファシズムのルーツ

第一章 古典的ファシズムの興亡

イタリア、ドイツ、日本の場合/ファシズムの温床/枢軸国反ファシズム勢力の失敗/ファシズムの軌跡/ファシズムのイデオロギー/枢軸の崩壊/不滅の神話

第二章 新しい企業社会への出発

”自由社会”に日は沈まない/ゴールデン・インターナショナル/大企業に肩入れする政策/大企業の経営戦略/軍事優先のテクノロジー

第三章 エスタブリッシュメント、その不思議な構造

権力の城/超富豪/大企業の支配者/大統領のネットワーク/雇われ経営者たち/エスタブリッシュメントの底辺を支える人々/大物同士の争い/追放と転向/異端の洗脳

第四章 資本主義発達の副作用

充満する欲求不満/崩壊する仕事、社会、家庭/孤独と疎外/企業犯罪の汚れた構造/権威の失墜

第五章 縮小する資本主義世界

相次ぐ共産政権の誕生/忍び寄る社会主義/第三世界は要求する/緊張緩和―より冷えた冷戦/アメリカの世紀の終焉

第六章 再燃する資本主義の危険

避けられない景気の後退/潜在的失業者/ハイエナの喜び―インフレーション/階級闘争のダイナマイト/限定戦争/限りない過剰殺戮力

Ⅱ フレンドリー・ファシズムの妖怪

第七章 フレンドリー・ファシズムの論理

危機につけ込む/権力の結束/忍び寄る専制政治/すべての道は…

第八章 国際資本主義か新孤立主義か

悪夢のドミノ効果/”本当の帝国”/起こりうる結果

第九章 ”顔のない”エスタブリッシュメント

”スーパー・アメリカ株式会社”へ/大統領の正当性/姿を変える軍国主義/立ち直る急進右翼/権力の集中を支えるイデオロギー/三枚舌

第十章 フレンドリー・ファシズムの経済学

スタグフレーションの進行/金は上流に流れる/不足、欠乏、窮乏/ひろがる環境汚染/核のもたらす危険/つくられる消費

第十一章 民主主義機構の転覆

三権の統合/フレンドリー・ファシズムの連邦主義/カーニバルの効用/二大政党の対立と調和/労働組合の懐柔/ウォーターゲート事件の教訓/大統領をすげ替える/アメリカ式クーデター

第十二章 情報と人心の操作

”行進”の洗脳効果/大きな嘘ほど信じられる/イメージと現実の間/巧妙化する言論統制/世論調査という名の世論操作/テレビの偉力/監視される恐怖/「揺籠から墓場まで」の身上調書/権力を正当化するための統計操作/規格化される学生たち/教育の隔離機能

第十三章 体制受容の奨励策

知的専門職の増加/ヨブ、プロメテウス、そしてファウスト/消費者への甘い誘い/過剰サービスに振り回される/紐付きの恩典/利益配分による操作/富の甘い香り

第十四章 エスカレートするテロリズム

暴力の段階/狙い撃ちの粛清/力による対決/新しいかたちの加害行為/秘密工作/下層階級のなかでの対立/暴力と自警団

第十五章 セックス、麻薬、狂気、異教

セックス―解放から抑圧へ/麻薬信仰/狂気による狂気からの逃避/異教―服従と帰属意識

第十六章 エスタブリッシュメント予備軍

フライパンか火か/抜擢の効用/レジスタンスを骨抜きにする/新しい無関心派の登場

第十七章 決定論の神話

「ファシズムは来ない」という楽観論/「ファシズムは来る」という悲観論/奴隷状態か、人類絶滅か

Ⅲ 本当の民主主義

第十八章 まだ、始まってはいない

今日のアメリカとフレンドリー・ファシズムのアメリカ/なぜ、まだ始まっていないのか

第十九章 民主主義の展望

手垢の付いた”民主主義”/民主主義のための闘い

第二十章 民主的原理の実践

相互依存の世界秩序/エスタブリッシュメントの民主化/富の均衡を図る/社会基盤の民主化/人間解放のための情報/人間的価値観の確立/真理と理性的行動

第二十一章 あなたは何ができるか

”あなた”への問いかけ/「一匹の蟻が象を狂わせる」/高い理想と現実的な努力/よくも悪くもわが祖国

訳者あとがき

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