私はLAMYが嫌いだ

タイトルは釣りです。

実のところ私はLAMYが大好きである。少なくとも見た目は申し分ない。正直この点では、日本のメーカは(トンボのデザインコレクションがかろうじてという程度で)全く勝負にならないとすら思う。イタリアのParaphernaliaとか、面白いんだけど明らかにデザインが実用性に先行している(ようするに見た目は良いけど使いにくい)メーカもあるが、LAMYのデザインは機能性と直結している。さすがバウハウスを生んだドイツという感じである。

LAMY ローラーボール スイフト L330 パラジュームコート

ラミー ローラーボール ダイアログ 2 ロジウムコート L374 正規輸入品

とりあえずLAMYは水性ボールペンが素晴らしい。私もswiftdialog 2を愛用してきた。dialog 2はあまりに気に入ったのでAmazonのレビューまで書いた。

ラミー ローラーボール 替芯 ブラック LM66BK ティポ スイフト ダイアログ2用 正規輸入品

LAMY ティポPL オレンジ ローラーボール L337OR 〔正規輸入品〕

まあ軸がどうこうというよりも、M66というインクリフィルが良く出来ているというだけの話なのだが、これがとにかくやたらインクが出てサラサラ書けるので気持ち良いのである。乾きやすいのでキャップ必須が普通の水性なのにキャップレスでOKというのがまたすごい。切れるのが早いくせに値段が高いとかインクが減ってくると線が細くなる(こういうのはむしろ全く出なくなるほうが好ましい)とか裏移りが激しいとか、問題がないわけではないのだが、一点突破型の良さである。使ったことがない方は、同じリフィルが使える廉価版のtipoあたりで一度体験してみることをお勧めする。

LAMY 【ラミー】 万年筆 サファリ L43 ペン先 EF (極細字) 2015限定色 ネオンライム

LAMYは安い万年筆も素晴らしい。Safariはもうドが付く定番で、そこら中の文房具屋やら雑貨屋で売っていますね。近年の限定色商売には鼻白むこともあるが、とにかくデザインの勝利という感じである。これやペリカンのペリカーノJr.あたりに刺激されたのか、最近では日本でも安い万年筆が多く出ていて、それらは機能的にはおそらく大変素晴らしいものだと思われるのだが(先日コンビニでプラチナのプレピー万年筆を見かけて買ったらよく出来ていて驚いた)、やはりこういうのは安い入門者向けのものこそ見た目が重要だと思う。

ラミー ボールペン ノト ブラック シルバー L283 正規輸入品

しかし、LAMYの普通の油性ボールペンはどうなんですかね。例えばnotoのデザインはさすが深澤直人という感じで素晴らしいが、インクリフィルのM16は最悪だ。Safariの油性ボールペンバージョンも同じ芯だと思うが、書き出しはかすれるし、ダマは出来るし、粘度が高すぎて相当筆圧をかけないと書けないし、疲れる。まあ最悪というのは言い過ぎかもしれないが、いかにも昔ながらの油性ボールペンという感じである。最近の日本メーカの優秀な低粘度油性インクに慣れているとむしろ逆に衝撃を受けるというか、20年くらい前で時間が止まっている感が否めない。結局のところ書き味の大半を決めるのはリフィルの出来なので、これではデザインが台無しであろう。多色ペン用のいわゆる4C芯であるM21も最悪で、日本メーカの替芯に慣れていると使えたものではない。LAMY2000とか薦める人が多いが、本当にあんな書き味で満足しているのだろうか。まあ満足していない人が多いので、芯だけジェットストリームに入れ替える人とか、リフィルアダプターみたいなものが出てくるんでしょうね。

あと、LAMYの高級ラインというか、金属軸全般に言えることなのだが、いくらなんでも耐久性がなさ過ぎると思いません?ロジウムやらパラジウムやら希金属でメッキしてあるはずなのだが、すぐ錆びるか、メッキがはがれるか、あるいはなんかメッキが水ぶくれのように浮き上がってくるのである。機構が壊れたことはないが、見た目の劣化はかなり早いという印象が強い。私の使い方が悪いのか、手の腐食力がものすごいのか。あれもなんとかしてもらいたいなあ。

 

カランダッシュ フロスティ

カランダッシュ【CARAN d'ACHE】ボールペン フロスティ ブラック NN0828-509

ペンに限らず私が好きなものは大体すぐ廃番になるのだが、このカランダッシュのフロスティもどうやら実質的にディスコンのようで悲しい。

カランダッシュボールペン替え芯BK F 8428-009

カランダッシュはスイスの筆記具メーカーで、鉛筆から万年筆まで手広く作っているが、最も有名なのはボールペンだろう。ガワというか軸はいろいろあるが、中身のインク・リフィルは基本的に同じで、ゴリアット芯というのを自社で製造している。三菱ジェットストリームに代表される低粘度油性インクや独シュミット社のeasyFLOWが出てくるまでは、ゴリアットがおそらく世界最高のリフィルだった。今でも依然として同率一位だと思う。見た目はパーカー互換みたいなのに微妙にサイズが違うのよね…。

カランダッシュ ボールペン エクリドールコレクションシルバー YN0890-487

ボールにインクを送る溝が多いとかなんとか、いろいろ理屈はあるらしいが、とにかく独特のなめらかというかぬるぬるしゃりしゃりという感じの書き味が気持ち良く、加えて書き出しでかすれることが(ほとんど)無いというのが素晴らしい。油性ボールペンが嫌いな私でも抵抗感無く使えたほぼ唯一のボールペンで、ずいぶん前にエクリドールという、まあカランダッシュのラインで言えば中くらいのグレードだがボールペンとしてはかなり高いやつを買い、喜んで使っていた。

フロスティは、エクリドールを含むカランダッシュの高級ラインの廉価版という位置づけになるのだろう。しかし、フロスティはエクリドールの単なる劣化バージョンではなかった。エクリドールは元々メカニカル(シャープ)ペンシルから始まったシリーズということもあり、素材は金属だが形状は鉛筆を模した細い六角軸になっている。一方このフロスティはエクリドール同様六角軸なのだが、はるかに軸が太く、かつプラスチックなので軽い。私自身は細軸の筆記具も別に嫌いではないし、むしろ馴染んでいるくらいなのだが、太軸で軽いほうが手が疲れないのも確かだ。しかも、フロスティはどうやら重量バランスを相当工夫しているようで、ペン先のほうに重心があり、非常に書きやすい。私は基本的にボールペンは芯の出来にのみ興味があり、軸はあまり気にしないのだが、これは芯よりも軸に注目すべきペンだったのである。

CARAN d' ACHE【カランダッシュ】 ボールペン 849コレクション レッド 0849-070 〔正規輸入品〕

実はフロスティの芯はオリジナルのゴリアットではなく、少なくとも形状が違う(たぶん中身は同じだがインクの量が少ない)。おそらく、カランダッシュ的にはわざわざフロスティ専用の替え芯を作るのが馬鹿馬鹿しくなったのだろう。これがフロスティを廃番にした理由の一つではないかと思う。というのも、カランダッシュの低価格路線としては最近では849シリーズというのがあって、こちらのリフィルはゴリアットそのままなのだ。軸の形状も素材が違うだけでエクリドールとほぼ同じ、ようするにエクリドールの「単なる」廉価版である(エクリドールより軽くてカラフル、という違いはあるが)。一方、フロスティはそもそもエクリドールとはかなり性格が異なるペンになっていて、ワン・アンド・オンリーだった。それだけに廃番が惜しまれるのである。

 

オート NBP-505SHとネットの記憶

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先日都内某所のカフェで打ち合わせまでの暇を潰していて、約束の時間となり店を後にしたのだが、うっかり席にペンケースを忘れてしまった。慌てて戻ったのだが、ゴミとして捨てられたのか、あるいは世の中には物好きがいるということなのか、すでに失くなったあとだった。

といってもペンケースはコクヨのネオクリッツだし、中身もしょせんボールPentelとかプラチナプレスマンとか安物ばかりなので、金銭的なダメージは大したことなかったのだが、一本だけ廃番で今では入手が難しくなっているのがあって往生した。それがこのオートのNBP-505SHというボールペンである。SHはSilver Hexの略だろうから、本当の品番はNBP-505かもしれない。

このブログではさんざん油性ボールペンをdisってきたが、実のところ私が今まで一番長く付き合った筆記用具は、この細長いマイナーな油性ボールペンなのだった。買ったのはたぶん10年以上前ではないかと思う。そもそもの定価は500円だし、何か特筆すべきところがあるというわけでもないのだが、いわゆるニードルポイントというやつで、ペン先が通常のコーン状ではなく針のようになっている。パイロットのハイテックCなどと同じタイプで、最近はあまり人気がないようだが、ペン先の接地点が小さいので力が入りやすく、また手元が見えやすいので、細かい字を筆記するのが楽なのだ。ソフトインクと称するインクもしょせん油性とは言え、ジェットストリーム登場以前からあるものとしてはかなりなめらかなほうだと思う。カランダッシュのエクリドール的というか、鉛筆的な六角形の軸は、手に当たって痛いからイヤだという向きが多いかもしれないが、グリップのローレット加工の溝の幅が絶妙なこともあって私はそんなに気にならない(というか、すでにペンに合わせてペンだこが出来てしまっている…)。ようするに、今さら他人にお勧めする気はないが、私としては無いと困るのである。

ざっとOHTOのウェブサイトを見たところ、0.5mmだとジーフィットスレンダーというやつか、スリムラインとかいうのが後継のようなのだが、そもそもどちらも六角軸でははない。改悪とまでは言わないが、根本的に別物のようである。結局オークションにデッドストックが出品されていたので、定価の2倍(といっても1000円だけど…)で落札したのだが、それにしても思うのはインターネットの記憶のはかなさである。大ヒットしたとは思えないが、それなりの本数が出たはずのこのボールペンに関する情報が、検索してもまるで出てこないのだ。そもそも商品画像すら見つからないのである。ネットは忘れないなどという人もいるが、実のところネットはマイナーな情報にはとことん冷淡だと思う。我々が気づかないだけで、日々情報は忘れられ、失われているのだ。だからこそ、法的に、規範的に、コード的に、アーキテクチャ的に、記憶が失われることがないよう工夫していかなければならないと思うのである。